コレステロール治療の常識と非常識:桑島巌 横手幸太郎

23 11月

コレステロール治療の常識と非常識<コレステロール治療の常識と非常識> (角川SSC新書)

一見タイトルを見ると現在の高脂血症治療に警鐘をならすのかと思いきや・・・
この著者らにとっての常識はやはりコレステロールは悪玉であるということ。

一方、非常識とは現状の高脂血症治療に対して批判を行っている日本脂質栄養学会の面々であると言うことがわかりました。

生まれたばかりの赤ちゃんのLDLコレステロールは60mg/dlぐらいなのです。人間以外の霊長類はだいたい40mg〜80mgと言われています。こうした事実を踏まえ私たちが生きて行くにはLDLコレステロールは50mgから60mg/dlあれば十分であろうと考えられています。

新生児のLDL値が60mg/dlだからといって、成人までその値で十分というのは論理が飛躍しすぎでしょう。まさか、薬で強制的にそこまで低下させるつもりなのでしょうか? 人間以外の霊長類のLDLも低いからって、種が違う動物のLDL値を比較してもしょうがないでしょう。

厳密にこの値にまでLDLコレステロール値をコントロールしなければ、心筋梗塞やその他の動脈硬化性疾患がおきてしまうのかというと、そこまでの詳細なエビデンスはまだ出てません。逆に言えば、この値を守っていたら絶対に心筋梗塞にはならないと言い切ることもできません。
大事なことは、ハイリスクの人、リスクが積み重なっている人はきちんとLDLコレステロールを下げることが必要だということですし、そこまで至っていない人は予防を心掛けましょうと言うことです。

エビデンスはまだないと認めているのに、ハイリスクの人はきちんとLDLコレステロールを下げることが必要である?どういった論理構成なんでしょうね?とくに「ちゃんと」とか「きちんと」などといった言葉を使う場合にはたいがい根拠がないことが多いんですよね。

また、糖尿病が現在増加している原因としてその増加しているグラフに自動車の台数を重ねて

「運動不足と動物性脂肪の取り過ぎが糖尿病の引き金になっていることは間違いないと言えるでしょう」

と、またしてもとんでもない飛躍をされてます。糖尿病の原因が運動不足はまあ許せるとしても脂肪の摂取は関係ないでしょう。脂肪は一切血糖値をあげないのだから。

血液中にLDLがたくさんあると、LDLは血管の内壁にしみこんでいきます。そしてこれが血管内膜の中で酸化してしまい、酸化LDLというさびて腐った状態、アテローム性動脈硬化のもとになります。

コレステロールが血管の内側にへばり付いて動脈が細くなるっていうのが元々の説ではなかったでしょうか?それが病理学的に否定されているから、LDLが内壁にしみこんで悪さをするというふうに主張を変えてるのでしょうか? LDLが本当に血管の内壁へ染みこむことができるのか?検証が必要でしょう。

タイトルとは裏腹に日本脂質栄養学会からの批判に対する反論の本でした。
ただ、ほとんど反論になってません。根拠が呈示されておらず、著者らの考えを書き流しているだけの本です。

 

このエントリーをはてなブックマークに追加
[`evernote` not found]
LINEで送る

コメントを残す